大使挨拶

在スイス日本国特命全権大使 前田隆平

 

 

在スイス日本国特命全権大使 前田隆平

 

 

 

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この度、駐スイス日本国大使として着任いたしました前田隆平です。この冬は東京の寒さも相当なものでしたが、私が到着した2月のベルンの寒さはそれを上回るものでした。しかし、雪に覆われたベルンの町の冬景色は、多くの日本人がスイスに対して抱いている清楚なイメージそのものでした。その意味では、この寒さの中で、私自身は、むしろ任国スイスに温かく迎えられた印象を持ちました。

国と国との外交というものは、必ずしも常に円満なものではありません。事実、私がかつて経験した大使館での仕事は、摩擦案件の処理、より具体的に言えば、もめごとを片づけることに大部分の労力を割かねばならないものでした。その私にとって、大変幸せなことは、スイスと日本の関係が歴史的に極めて友好的に推移してきたことです。現在も、両国間には深刻な対立案件もなく、むしろ文化面、経済面そのほかあらゆる分野で順調に交流が進められています。そうであればこそ、この良好な関係をより一層高めていくことが私の重要な責務であると考えています。来年、2014年は、スイスと日本の国交樹立150周年です。これは、双方の国民が、両国の関係の重要性を改めて認識するまたとない機会であり、私どもとしても、あらゆる努力を傾注して、この記念すべき年を、両国関係にとっての飛躍の年にしたいと考えています。

相互理解、これは国と国とにとって何よりも大事です。しかし、一つの国を理解することは決して簡単なことではありません。私は、かつて観光行政に携わり、外国からの観光客の誘致の仕事をしました。その時に驚いたのは、日本に来たことのない外国の方たちの中に、日本に行っても工場ぐらいしか見るものがないだろうと思っている人がいたことでした。これは極端な例ですが、おそらくスイスの方たちも、首都東京がどのような所かはイメージできても、より古い歴史が関西地区にあること、山岳から海洋に至るまで日本がスイスに負けないくらいの観光資源を擁していることなどは知らないだろうと思います。スイスからの訪日客は年間概ね1万5千人ほどです。もっともっと多くの人に日本を訪れて欲しいと思いますし、また日本を訪れたら、より多くのスポットを見て、日本という国をより深く理解して欲しいと思います。

一方、私は、日本にとってもスイスは深く理解しなくてはいけない国であると思っています。スイスへは年間約30万人の日本人観光客が訪れています。皆、その素晴らしい観光資源に魅せられ、美しい清潔な国という印象を持って帰っていきます。それはそれで正確な評価であると思います。ただ、他方で、スイスは、長年永世中立を保ち、EUとも一線を画し、国際機関を数多く誘致しながら国連への加盟はほんの10年前という独特な外交を展開してきています。豊かな観光資源を持つ一方で、天然資源などは乏しく、日本と同様の「持たざる国」として国際社会でどのように生き抜くかを深く考えながら進んできた国でもあります。この観点からすれば、スイスは日本にとって非常に勉強になる国であり、またそのような勉強を通じてこの国への理解も正確なものになっていくと思います。

150周年を控え、両国の関係強化の取り組みが本格化していきます。それとともに、両国が相互に理解しあっていく重要性もどんどん高まっていきます。そのような動きの中で、大使館としては、引き続き、皆様方のご理解を得つつ、更に皆さんと力を合わせて、両国間の友好関係増進に邁進していきたいと考えています。

 

  

駐スイス日本国大使 前田隆平
(2013年3月)