白石大使によるノバルティス社,ロシュ社及び横河電機の視察

令和3年10月27日
白石大使は,10月19日,バーゼルに所在するノバルティス社,ロシュ社及び横河電機を視察しました。
ノバルティス社にて
ロシュ社にて
ロシュ社屋上
横河電機にて

白石大使の感想

10月18日、バーゼルの製薬会社2社ノバルティスとロシュの本社と日本企業・横河電機の出先事務所を視察しました。森奈津子書記官の同行です。

ノバルディスとロシュは、いずれもスイスを代表する世界有数の製薬会社です。まさに目と鼻の先で名門企業が競い合う構図で、バーゼルの活気を感じさせます。

最初にお邪魔したのがノバルティス。受付で「まず構内を案内しましょう」とツアーに誘われました。中層ビルが立ち並ぶ敷地は、ビジネスあるいは開発研究センターという感じではなく、学生が自由にたむろする大学構内のようです。社内でも「キャンパス」と呼んでいるそうです。

キャンパスには銀行あり、スーパーあり、レストランあり、花屋あり・・・外に出なくてもちょっとした用事は済む、という説明でした。さすがに病院はないということでしたが、従業員の幼児を預かる託児所があり、そこでは3か国語で子供の面倒を見ているそうです。

それぞれのビルは国際的に著名な建築家の設計によるものとか。日本人建築家の安藤忠雄さん、谷口吉生さんが設計したビルもありました。

開放的な構内にはアート作品もあちこちに置かれていて、知的創造力を刺激する雰囲気がいっぱいです。建物内部も同様、人の往来が自由にできるように工夫されていて、触れあい、響き合いを大事にする雰囲気にあふれています。

ツアー後、本社ビルでノバルティス幹部の説明を聞きました。ノバルティスの前身は260年以上前にバーゼルで生まれた化学品会社。以後、いろいろな変遷を遂げて1996年に現在の形で出発したそうです。従業員は総数およそ11万人。国籍は142か国に及びます。

医薬品開発、ジェネリック医薬品製造、がん治療の3つが中心的な事業で、年間総売上は487億米ドル、収益は81億米ドル。巨額過ぎてすぐには日本円に換算できませんね。

日本にも支社を置き、3400人を雇用しています。地域医療に重点を置き、地方自治体や地方大学との協同を進めているそうです。

次いで、ロシュ社を訪問しました。ロシュ社は19世紀末に医薬品会社としてスタート。世界的に販路を広げ、日本には20世紀初めに進出しています。従業員は10万人近くを数え、ノバルティス同様、世界に冠たる製薬企業になっています。

同社の構内もノバルティス社と同じく開放的な雰囲気で、中央に高層ビルが建っています。最上階にはカフェテリアがあり、バーゼル市街を見下ろしながら仲間同士談笑することができます。

ガラス張りの最上階を一回りすると360度の光景を楽しめます。北西側にはフランスの領土内にある飛行場、北東側にはドイツ領土内の鉄道駅が見下ろせます。バーゼルは独仏スイスの三つの国境が接する街だと実感できました。従業員の6割が国境をまたいで来る越境通勤者というのもわかります。

医薬品の開発、そのための研究には巨額の費用と人材が必要です。多くのプロジェクトが同時進行するのですが、どれが新薬として成功するのか、干し草の中から1本の針を探すような難しさだといいます。

研究予算の調達、新しいアイデアを生み出す研究者、そしてどこに的を絞るかを決める経営者の存在。バーゼルにはそれを可能にする魅力があるのでしょう。日本にとっても学ぶところが多いように感じました。

両社の視察に当たって、スイス国民議会(日本の衆議院に当たります)の議員で、日本・スイス友好議員連盟のスイス側会長であるシュナイダー・シュナイター女史に紹介の労を取っていただきました。議員はこの地域の選出で両社幹部とも旧知の間柄です。視察にも同行していただき、お世話になりました。この場をお借りして御礼を申し上げます。

この日の締めくくりに、バーゼル市内のイノベーション・パーク内に事務所を新設した横河電機を訪れました。同社はもともと、製造現場のシステム自動化に伴う制御などの関連技術・情報提供を、主な事業として取り組んできたそうです。

最近、事業の多角に取り組みはじめ、その一環としてバーゼルにいわばアンテナ・ショップを置き、新しい経済成長分野の動向を探り、新事業を開発することになったのだといいます。

そのキーワードがバイオ。その意味では、医薬・健康・環境への目配りが鋭く、先進的なスイスのバーゼルが最適だと判断したと、支社長の澤井さんは説明してくれました。

事務所開設から1年数か月。これからが正念場かと思います。御活躍を期待しています。