白石大使によるJTIダグマーセレン工場の視察

令和3年12月21日
白石大使によるJTIダグマーセレン工場の視察
白石大使によるJTIダグマーセレン工場の視察
11月30日、白石大使は、ダグマーセレンに所在するJTI社の工場を視察しました。レイ・ジェネラルマネージャーより、JTI社の活動状況について説明を受けた後、自動化が進む工場を視察しました。

白石大使の感想

「自動化されたたばこ生産工程に驚く」

JTI(Japan Tobacco International)は、日本たばこ産業(JT)の海外事業部門でジュネーブに本拠があり、ルツェルン州のダグマーゼレン(Dagmersellen)工場はたばこの製造工場として大きな役割を果たしています。

JTは1985年に日本専売公社から民営化され、民間企業としてたばこ生産を中心に事業を展開してきました。海外のたばこ企業を買収しながら成長し、今では世界3位のたばこ会社です。

たばこ産業は、人々の健康志向、喫煙規制強化などの理由で事業展開は容易ではないようです。JTについては、日本国内の需要は落ち込んでいるのですが、海外市場では企業買収による規模拡大、生産の効率化などにより事業は拡大基調にあるようです。ダグマーゼレン工場は、好調な海外事業の一翼を担っています。

視察当日は工場の幹部から説明を受けた後、工場内を見学しました。

世界の主要生産地から集まったたばこの葉はしばらく熟成させた後、工場に運ばれます。工場では、水蒸気の熱と水分を加え、柔らかくほぐして葉たばこをブレンドします。それを乾燥させてから細かく刻み、紙で巻き上げてフィルターを付け、小箱に詰める。これが一般的な紙巻きたばこの工程だそうです。

工場ではこの工程をほぼ完全に自動化しているといいます。
ロボットが多用され生産効率を高めるのに大いに貢献しているそうです。「吉」と印字されたロボットが活躍しています。確かに、工場内で見かける従業員はまばらで、自動化が進んでいるのがわかりました。

スイスは有数のたばこ輸出国で、ジェネラル・マネージャーのレイ現地法人社長によると、「たばこの海外輸出はチーズと同じぐらい多い。その売上げはスイスの国内総生産(GDP)の1%に当たります。また、たばこの税収はスイスの財政に大いに貢献しています」ということでした。

また、レイ現地法人社長は、ダグマーゼレン工場では地球温暖化を防ぐための環境保全、持続可能な成長を最優先に考えており、「JTI全体で、排出される炭酸ガスの28%削減、使用エネルギーの48%は再生可能エネルギー使用、使用水量の12%、廃棄物の10%削減」などと数字を示しながら環境への配慮を強調しています。

一方で、たばこによる健康被害が指摘され、世界的にたばこに対する規制が強化される中で、たばこ産業は以前より厳しい状況に置かれています。レイ現地法人社長は、「たばこの需要は徐々に減ってはいるが、市場としてはまだまだ将来性はあると思う」と語っていました。

最後に、こんな質問を投げてみました。「ここの従業員は喫煙しなければいけないのですか」。「いえ、そんなことはありません。従業員個人の嗜好、考え方の問題で、会社側から求めたりすることではありません。私自身はたばこを吸いません。この会社に勤めるとき、喫煙者かどうか、聞かれなかったですよ」と、レイ現地法人社長は明言していました。(2021年12月20日記)