白石大使の活動報告コメント「登山鉄道を楽しみたい」
令和3年12月17日

残念ながら、まだ「世界遺産の鉄道」に乗ったことがありません。11月4日に訪問したレーティッシュ鉄道(本社:クール市)が経営するアルブラ線・ベルニナ線とその周辺の景観が世界遺産に指定されています。スイスとイタリアが共有する国境をまたぐ世界遺産なのです。
レーティッシュ鉄道は、スイスの東部に位置するグラウビュンデン州で多くの路線を抱える地方鉄道です。19世紀末に設立された歴史のある鉄道会社で、初めは民営会社として出発し、その後、州政府と連邦政府の出資を得て現在に至っているようです。
本社のあるクールはグラウビュンデン州の州都で、古くはローマ帝国時代に遡る歴史を持っています。ローマ帝国時代にローマ軍の宿営地が置かれたといいます。イタリアを越えてスイスに至る峠道は昔からいくつかあり、それが集束する要衝としてクールは栄え、交易で賑わいました。ワインや農産物、織物などが取引されていたのでしょう。
しかし、近代に入り峠の険しい山道がトンネルでつながれ、列車で人や物が往来できるようになると、中継の要であったクールの存在価値が薄れます。将来を憂えたクールの人たちは、交易から観光へとビジネスの重点を移そうと考えました。アルプスの景観を活用する戦略です。それが鉄道開発につながりました。
<昔はイタリアとの往来にはグラウビュンデン・パス(峠)を越えなければならず、スイス側の中継地であるクールは大変重要でした。しかし、時代が変わり、峠には山中を走るトンネルが走り、車や列車で簡単に行き来できるようになりました。時代の変化に対応しながらクールの人々は成長の道を探る中で、観光業が生き残りの柱に浮上し、鉄道が大きな役割を果たすことになったのです。レーティッシュ鉄道はその象徴ですね>。
レーティッシュ鉄道・ファスキアティ社長の説明を要約すれば上述にようになるでしょう。
レーティシュ鉄道は戦後のモータリゼーションの波に飲み込まれることなく発展してきました。アルプスの素晴らしい景観を楽しめるパノラマ列車を投入し、世界中から訪れる多くの観光客を魅了しています。社長の説明によると、登山鉄道が運ぶのは70%が乗客、15%が自動車、残り15%が貨物とのことです。
日本の箱根登山鉄道とは40年来の友好関係を維持しており、相互交流を続けてきたそうですが、ここしばらくはコロナ禍のため中断。「来年こそは復活させたい」と社長は期待しています。
アルプスの鉄道の旅は、大使である私にとっても念願の一つです。コロナ禍のため、着任から2年を経てもベルニナ急行に乗る機会がありません。是非実現させたいと思っています。
レーティッシュ鉄道本社を訪問した際、社長に隣にいたアジア・太平洋市場担当のセバスチャン・ブラットラーさんは、高校生時代、大阪に短期留学した経験があるそうで「おおきに」「ありがとさんです」などと時々日本語を挟みながら私たちとの会話を楽しんでいました。
ファスキアティ社長、ブラットラー担当さんの心のこもったもてなしに感謝しています。(2021年12月6日記)
レーティッシュ鉄道は、スイスの東部に位置するグラウビュンデン州で多くの路線を抱える地方鉄道です。19世紀末に設立された歴史のある鉄道会社で、初めは民営会社として出発し、その後、州政府と連邦政府の出資を得て現在に至っているようです。
本社のあるクールはグラウビュンデン州の州都で、古くはローマ帝国時代に遡る歴史を持っています。ローマ帝国時代にローマ軍の宿営地が置かれたといいます。イタリアを越えてスイスに至る峠道は昔からいくつかあり、それが集束する要衝としてクールは栄え、交易で賑わいました。ワインや農産物、織物などが取引されていたのでしょう。
しかし、近代に入り峠の険しい山道がトンネルでつながれ、列車で人や物が往来できるようになると、中継の要であったクールの存在価値が薄れます。将来を憂えたクールの人たちは、交易から観光へとビジネスの重点を移そうと考えました。アルプスの景観を活用する戦略です。それが鉄道開発につながりました。
<昔はイタリアとの往来にはグラウビュンデン・パス(峠)を越えなければならず、スイス側の中継地であるクールは大変重要でした。しかし、時代が変わり、峠には山中を走るトンネルが走り、車や列車で簡単に行き来できるようになりました。時代の変化に対応しながらクールの人々は成長の道を探る中で、観光業が生き残りの柱に浮上し、鉄道が大きな役割を果たすことになったのです。レーティッシュ鉄道はその象徴ですね>。
レーティッシュ鉄道・ファスキアティ社長の説明を要約すれば上述にようになるでしょう。
レーティシュ鉄道は戦後のモータリゼーションの波に飲み込まれることなく発展してきました。アルプスの素晴らしい景観を楽しめるパノラマ列車を投入し、世界中から訪れる多くの観光客を魅了しています。社長の説明によると、登山鉄道が運ぶのは70%が乗客、15%が自動車、残り15%が貨物とのことです。
日本の箱根登山鉄道とは40年来の友好関係を維持しており、相互交流を続けてきたそうですが、ここしばらくはコロナ禍のため中断。「来年こそは復活させたい」と社長は期待しています。
アルプスの鉄道の旅は、大使である私にとっても念願の一つです。コロナ禍のため、着任から2年を経てもベルニナ急行に乗る機会がありません。是非実現させたいと思っています。
レーティッシュ鉄道本社を訪問した際、社長に隣にいたアジア・太平洋市場担当のセバスチャン・ブラットラーさんは、高校生時代、大阪に短期留学した経験があるそうで「おおきに」「ありがとさんです」などと時々日本語を挟みながら私たちとの会話を楽しんでいました。
ファスキアティ社長、ブラットラー担当さんの心のこもったもてなしに感謝しています。(2021年12月6日記)