白石大使の活動報告コメント「甲冑に魅せられたサムライの伝説展」

令和3年12月17日
オープニング式典での白石大使挨拶
装飾が美しい鎧やめずらしい馬面が展示されています。
11月3日夕、ベルン歴史博物館近くのホテルで当館後援の「サムライの伝説展」の開会式典、続いて博物館で内覧会が開かれ、参加させてもらいました。

日本大使館を代表してお祝いの言葉を述べた中で、博物館が所蔵する展示物の一つに、江戸時代の鎧があり、それが徳川幕府からの贈り物だったというエピソードを紹介しました。

その中で私は、幕府の代表団が1867年のパリ万博参加の途次、スイスに立ち寄った際、ベルン市に贈ったのがその鎧で、スイスと日本との長い交流の歴史の象徴である、と強調しました。

日本とスイスは明治維新の直前の1864年に修好通商条約を結び、外交関係を築きました。以来、今日までの長いおつきあいというわけです。

日本との関わりの深いスイスで今回、このような素晴らしい展示を実現していただいた関係者の皆様に心から御礼を申し上げます。

この夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、スイス選手のめざましい活躍とともに、日本への関心が高まっています。9月に博物館の庭で開催された「日本祭り」も、コロナによる入場制限にもかかわらず2500人ほどの人が訪れ、活況を見せていました。
東京五輪の余韻が残る中で、「サムライの伝説展」の注目度は高いはずです。成功を祈念します。

日本の文化、歴史を理解する上で、鎧や刀剣などの武具は武士道とともに西洋人にとっては不可欠のもののように思います。残念ながら先ほどの鎧は、今回の「サムライの伝説展」では展示されていませんが。

「サムライの伝説展」はスイスとのつながりがあるアメリカの収集家が歴史博物館に貸し出して実現したものです。内覧会の当日、その鎧コレクターにもお会いして言葉を交わしましたが、「ひょんなきっかけで武士の鎧に魅せられ、買い集めた結果、日本以外では世界最大の鎧コレクションになった」と話していました。

その言葉通り、展示された鎧は彼のコレクションの一部に過ぎませんが、どれも圧倒的な存在感で見る人を驚かせます。武具であると同時に美術工芸品としても素晴らしく、それを造らせた武士の心意気、美意識の高さと、それに応えた職人の技量の素晴らしさを感じさせてくれます。

鎧や刀剣、馬具にいたる豊富な展示物は、現代のアニメや漫画などの展示と相まって、今に生きる「サムライ・スピリット」をスイスの人々に訴えかけることでしょう。

「サムライの伝説展」はいろんなイベントともに来年春まで続けられる予定です。一見の価値ありです。

余談ですが、「サムライの伝説展」にちなんで、黒澤明監督の「7人の侍」他がベルン市内の映画館で来年1月上旬から上映される予定だそうです。これも乞う御期待。(12月17日記)