白石大使の活動報告コメント「伝統とモダンが両立する時計メーカー」

令和4年3月16日
スウォッチ本社内にて
エシュリマン(Mr. Raynald AESCHLIMANN)オメガ社CEOと
 3月11日、ビール市にあるスウォッチ・オメガ両社を訪問しました。両社はスイスの時計メーカーですが、世界的なブランドとして知られています。オメガ社はスウォッチ社グループの傘下にあり、「スウォッチ・オメガ・キャンパス」と呼ばれる敷地に併存しています。

 特色のある本社ビルは、国際的に活躍する日本人建築家・坂茂(ばん・しげる)さんの設計です。曲面を多用したデザインで、私のような素人には巨大なナマコのように見えました。木材をふんだんに使ってぬくもりと優しさを感じさせていて、独特の雰囲気を出しています。

 スウォッチ社の建物の内部は自然光が入り込んで明るく開放感があります。まるで子供の遊びに来たような印象です。色彩が豊かで調度品の造形にも堅苦しさがありません。見慣れたオフィスとは異次元の空間です。その中に、無数のスウォッチ時計が展示されています。腕時計をキャンバスにした小さな美術品のコレクションです。よくもこんなに違うデザインの時計を作れるものだ、と感心しました。

 一方、隣接するオメガ社はさすがに伝統的な高級時計メーカー。スウォッチ社の雰囲気とは正反対の落ち着いたたたずまいがありました。時計の部品や製造工程が説明されており、これまでのモデルの展示を含めてオメガの歴史が理解できます。

 別棟では各地から集められた部品を組みたてて出荷する最終工程が行われています。部品の整理、補充、調達は無人倉庫でコンピューター制御のロボットがこなしています。組み立てから最後の点検、ケース詰めはベテランの従業員がこなします。最大の敵はほこりなので、ほこりが出ないように空調施設が整っています。

 「マスク着用は当然です。除菌も徹底しています。安全なエリアなので、ここではコロナウィルスの集団発生(クラスター)は起きていません」と、管理担当者が言っていました。

 新しいデジタル機器が登場し、携帯電話やパソコンには時計の機能が組み込まれるようになっています。時計がなくなることはないのですかと尋ねたところ、オメガのエシュリマンCEO(最高経営責任者)は「我々には影響はありません。求めるものが違うのです。スウォッチはアートとしての魅力、オメガは持つことの喜びを顧客に与えていますから」と応えました。

 「モダン」の魅力と「歴史」の自信が印象に残りました。(3月14日記)